自分を苦しめない言葉
さて前回までで、心を整える重要性を書いてきましたが、その実践の一つとして原始仏教で強調されているものの中に「言葉」があります。
「自分を苦しめず、また他人を害さないことばのみを語れ。これこそ実によく説かれたことばなのである」
「好ましいことばのみを語れ。そのことばは人々に歓び迎えられる。つねに好ましいことばを語っているならば、それによって人の悪意を身に受けることはない」
ウダーナヴァルガ8章12-13
ここでは、言葉の善悪の基準を、自分を苦しめない、他人を害さない、というところを基準にしているととらえていいでしょう。
原始仏教では、自身を最も大切なものというところから出発し、他人を「わが身に引き当てて」と他の人も自身を最も大切に考えていることを知り、自分を害さないこと=他人を害さないという考え方です。(自己こそ自分の主であるに詳しく書いています)
自身が言われて苦しむ言葉を言ってはならない。と素直に解釈すべきでしょう。
もちろん、他人の気に入る言葉をという部分も、決してお世辞や、美辞麗句を言うことでないことは「わが身にひきあてて」という、基本精神で考えれば問題なく理解できると思います。
思いやりと節度をもった正しいことば、ととらえるのが適切でしょう。
そして、
「善いことばを口に出せ。悪いことばを口に出すな。善いことばを口に出すほうが良い。悪いことばを出すと、悩みをもたらす」
ウダーナヴァルガ8章8
これは皆さんもご経験があるのではないでしょうか、やはり悪いことば、他人を傷つける言葉を言ってしまうと、心に残ります。
やはり、悪いことばを口に出すと、心が乱れ、苦しみをためてしまうのでしょう。そして、相手を傷つけ、そしてまたそれが返ってきて・・・苦しみの連鎖が始まります。
確かに、いつも悪口を言っていたり、罵ってばかりいるような人は、こころが穏やかではないですよね。よく観察すると苦しみに満ち溢れていることがわかります。
そのようなことをこのように述べています。
「人は生まれながらに口の中に斧がはえている。愚かな人は、人の悪口を言っては、(その口の斧で)自分自身を斬っていると」
ウダーナヴァルガ8章8
ことばは他人を傷つけるのみならず、自身を傷つけます。その様子を「口の中の斧」との表現はとても面白いですね。
口を慎む。他人への思いやりを忘れない、穏やかな言葉を語る。
このように、気をつけて生活するところに、安らぎは生まれるのだとブッダは言っているのでしょうね。
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